Lesson 03では2枚のカードを作るところまで行った。演習のためにもう1枚、すなわち3枚目のカードを作られた読者もおられるかもしれない。
それでは、実際のカードの作成に入ろう。大型コンピュータに代表される旧来型のソフトウェアなら、カードに記入する項目をきちんと洗い出してからカードを設計し、それに基づいてカードを作成していく必要がある。
しかしここでは、HyperCardの融通の高さに甘えて、記入項目の詰めを厳密に行わないまま始めてしまおう。パソコンのデータベース・ソフトの利点は、後で変更可能であるという柔軟性である。HyperCardは、その中でも特に、後からの修正が容易である。
とりあえず必要な項目を思い付くままにあげてみると、以下のようになる。
このうち、(12)〜(14)には、ちょっと異質な感じを持たれる読者が多かろう。カードを作る最初の段階から、この欄を設けておくのにはわけがある。
まず、名簿を作成し維持していく側としては、その人について最初の入力を実行したのがいつであるのか、がわかっていると都合がよい。それでいて、これは本人に関する事項と違って後から本人に聞いても確かめようがないから、名簿作成者側で対処せざるを得ない。便利なことにMS-DOSパソコンと同様に、Macintoshでは時計を内蔵しており、日付を扱うのが容易である。HyperCardで、操作時点の年月日を自動的に取り込むなど朝飯前だ。
そこで、カード設計の初期段階から、入力年月日(正確には、新規カード作成の年月日)を自動的に書き入れる欄を用意しておく。
上の(1)〜(14)の項目の大体の位置を表した画面を示す(未掲載:画面04-01)。ここでは筆者が作成したのでHyperCardの画面になっているが、実際には紙に鉛筆でラフに書いておけばよい。HyperCardでは、多数のカードに入力した後でもカードの変更が自由に行えるからである。
なお、フィールドを実際にカード上に設ける手順は、∠Lesson 12(ページxxx)で紹介する。また、カードにかなりの余白があるが、これは将来の拡張を見越してのことである。余白の部分に何が入るのかについては、おいおい明らかにしていこう。
はじめに、カードのタイトルを書き込む。スタック「KB会会員名簿」をオープンすると、前回作成したカードのうち、最初のものが画面に現われる。これには「KB会会員名簿」という文字が2行、書かれている(未掲載:画面04-02)。
2つの文字は、一見同じように見えるが、実は性質が異なっている。どう異なるかというと、Lesson 03で説明したバックグラウンドの観点で異なるのである。上の「KB会会員名簿」の文字は、最初のカード1枚だけに書かれたものであり、バックグラウンドではない。下の「KB会会員名簿」の文字はバックグラウンドに書かれた文字であり、このスタックの中で新規カードを作ると自動的にコピーされる。
くどくなるが再度説明すると、下の「KB会会員名簿」の文字はカードにあらかじめ印刷された帳票枠のようなもので、同じ種類のカードを使うかぎり共通に存在する。上の「KB会会員名簿」の文字は、紙のカードに鉛筆で書かれたのと同じで、カードに固有と思えばよい。
カードの上に見える文字や図形がバックグラウンド上のものであるか否かは、バックグラウンド・モードにするとわかる。
バックグラウンド・モードにするやり方だが、Lesson 03ではメニュー・バーの「編集」メニューの中の「バックグラウンド」をドラッギングにより選択した。今度は別の方法をとってみよう。キーボードのスペース・バーの左にあるコマンド・キー(四葉のクローバと#を合成したようなマークのついたキー。Mac SE以降の機種ではりんごマークもついている)を押しながら、アルファベットの「B」を押すのである。メニュー・バーで「バックグラウンド」を選択するとき、省略形が「コマンド」+「B」だと知ることができるから、省略形を覚えるのは簡単である。
さて、そのように指示すると、「KB会会員名簿」の文字のうち下のものだけが表示される(未掲載:画面04-03)。メニュー・バーに入っている斜めの縞が、バックグラウンド・モードのしるしだ。
次に、大きな文字で「KB会会員名簿」と書き直そう。「ツール」メニューの左の列の一番下、大きな「A」を選ぶ。ただし、このままでは以前と同じ小さな文字が描けるだけである。文字を描く際の文字の大きさを変えるには、「編集」メニューの中の「テキストスタイル」メニューを選択すればよい(未掲載:画面04-06)。
なお、こういうときに画面をよーく見ておくようにしよう。「テキストスタイル」の省略形が、「コマンド」キー+アルファベット「T」だとちゃんと書いてある。次回以降は、メニュー・バーからドラッギングという手順を踏むことなく、「コマンド」キーを押しながらアルファベットの「T」を押せばいいことがわかる(「コマンド」+「T」と表す)。
「テキストスタイル」を指示して出てくるのは、文字サイズや書体(フォント)を変えるための画面(未掲載:画面04-07)。いままでの文字が、「Osaka」フォントの12ポイントで、後は特に指定のないものだった、と認識できる。
ではここで、「細明朝体」フォントの24ポイントで、太文字、字間せまく、にしてみよう(未掲載:画面04-08)。このように指定した後、カーソルをカードの左上にもっていく。なお、こうしたときの、縦棒の上下がそれぞれ二またに分れた形をしたカーソルを「アイ・ビーム」と呼ぶ。アルファベットの大文字の「I」に似ているからだとも、挿入(インサート)の頭文字をとったのだとも、いわれている。
マウスのボタンを押し、書き込み位置を決めてから「KB会会員名簿」と打ち込む。その後は、Lesson 02で習った手順に従って終了しよう。
(1)名簿管理のカードに設ける14の欄(=項目、フィールド)を列挙して見せた。ただし、従来の伝統的なデータベース・ソフトでは、後の変更が大変になるので、最初にきっちりシステム設計をしなければならないのに対し、HyperCardでは、入力開始後でも比較的用意に、構成が変えられる。したがって、必要な項目の洗い出しはそれほど厳密にしなくともよい。
(2)バックグラウンドには、文字を書き込むことができ、その際の文字の大きさや修飾(イタリック、影付けなど)は、「テキストスタイル」というコマンドで変更できる。
この記事は、オリジナルの著作者として中野潔の名を明記すれば、転載自由、改変自由です。この記事以外の、転載自由を宣言していない記事の無断転載は、著作権法違反となり、刑事罰の対象となります。