03Lesson 03 スタック呼び出しとバックグラウンド

作成しておいたスタックを呼び出す

 Lesson 01と02でHyperCardの終了の仕方がわかった。もう一度、HyperCardの開始から始めてみよう。Lesson 01では「KB会会員名簿」というスタックがなかったので、アプリケーション・ソフトである「HyperCard」のアイコン(絵記号)をダブルクリックして起動した。ダブルクリックとは、ご存知のように、アイコンにカーソルを合わせてマウスのボタンを素早く2度続けて押すことである。

 今度もHyperCardを起動するのだが、今回はLesson 01と事情が違う。「KB会会員名簿」(読者の方はそれぞれの名称を付けられていることと思う)というスタックが既にできているのである。そのため、「KB会会員名簿」のアイコンをダブルクリックするだけでHyperCardが起動できる(未掲載:画面B03-01)。「KB会会員名簿」のアイコンやファイル名を1回クリックして選択してから(アイコンやファイル名が白黒反転していれば選択したことになっている)、メニュー・バーの「ファイル」の下の「開く」を指示してもよい(未掲載:画面B03-02)。その際、Lesson 01や02におけるHyperCardの終了と同様、ドラッギングの技術を使うことはいうまでもない。

 Macintoshでは、データ・ファイル(この例ではスタック)を開く(「オープンする」ともいう)ことは、そのデータ・ファイルを作成したアプリケーション・ソフト(この例ではHyperCard)を開く(起動する)ことを意味する。MS-DOSパソコンにおける通常の操作のように、アプリケーション・ソフトを起動してから目当てのデータ・ファイル名を指定する、という2段階の手順を踏まなくてもよいのである。

 もっとも、Lesson 01と同じくHyperCardのアイコンをダブルクリックしてHyperCardを起動してしまっても安心だ。HyperCardでは何の指定もなくHyperCardを起動するとHomeカードが開かれることに決まっている。待つことしばし、Homeカードの画面になる。そうしたらおもむろに、メニュー・バーの「ファイル」の下から「スタックを開く」を指示する。ファイル選択のダイアログ・ボックスがでてくるので、「KB会会員名簿」の行をダブルクリックすればよい(未掲載:画面B03-03)。

 また、∠Lesson 06(xxxページ)で説明するが、Homeカードに「KB会会員名簿」をオープンするための専用ボタンを設けることも可能だ。

バックグラウンドとカードの区別

 さて、スタック「KB会会員名簿」をオープンすることで、Lesson 02で作った第1号のカードが表示された。しかしこのカードは、ほとんどノッペラボウ。このままでは、データの入力も何もできないので、これからカードを設計することになる。カードの設計のためには、“バックグラウンド”という概念を理解する必要があるので説明しよう。

 バックグラウンドとは、カードにあらかじめ印刷されたフォーム(帳票枠)のように、複数のカードに共通する形のことだ。カードAとカードBとが同じバックグラウンドを持つとは、たとえていえば、カードAとカードBとに同じフォームが印刷されているということである。画面にあるカードが現れているときに新規カードを作ると、画面のカードと同じバックグラウンドを持つようになる。

 バックグラウンドという概念のいいところは、まず、一度いいフォームを作成すれば、新規データを入力するため新しくカードを設けると、前述したように枠が自動的に新カードにコピーされることである。

 そして、同じバックグラウンドを持つカードが、たとえ50枚あろうと500枚あろうと、そのバックグラウンドを変更すると、バックグラウンドを共有するすべてのカードのフォームが、同時に変更されることである。

 バックグラウンドの考えを理解するために、未掲載:画面B03-04のカードに何か書き込んでみよう。

 画面上辺のメニュー・バーの中のツールをクリックし、マウス・ボタンを押したまま、開いた四角の左下隅の「A」という正方形のところまでカーソルを持っていく(ドラッギング)。そして、マウス・ボタンから指を離す(未掲載:画面B03-05)。この「A」で示されるツールをペイント・テキスト・ツールと呼ぶ。これにより「描画操作の一つとしての文字入力」が可能になる。

 HyperCardには、これと別に「データ入力操作としての文字入力」も存在するのだが、その違いは∠Lesson xx(xxxページ)で説明する。

カードに文字を書き込む

 文字入力が選択されているのだから、カードに文字を書き込んでみる。カードの左上の適当なところをクリックして、入力カーソルを点滅させる。その後、読者の方が通常使っているようなワープロの操作と同じ要領で「KB会会員名簿」と入力してみよう(未掲載:画面B03-06)。もちろん「KB会会員名簿」の名称は、読者の実状に合わせて自由に変えていただきたい。

 さてさきほど、バックグラウンドという概念があると説明したが、今書いたこの「KB会会員名簿」という文字は、バックグラウンドに書かれたものではないのである。

 その証拠に、メニュー・バーの「編集」メニューから「新規カード」という指示を選ぶと、新しいカードが作られ、画面に表示されるが、そこには「KB会会員名簿」なる文字が存在しない(未掲載:画面B03-07)。

 さっき「KB会会員名簿」と書いたカードが、このスタックの最初のカードであり、今表示されているカードがスタックの最初から2番目のカードである。「KB会会員名簿」の文字は、最初のカードだけに書き込まれた文字なのである。

 メニュー・バーの「ゴー」メニューから、「最初のカード」か「前のカード」を選ぶと、最初のカードに行く。その後、同じメニューの中の「最後のカード」か「後のカード」を選ぶと、再び2番目のカードに戻る(現在、カードが2枚しかないからこうなる)。

 何度も試してみれば、最初のカードに行くと「KB会会員名簿」の文字が表示され、2番目に戻ると消えるありさまが確認できることと思う(実はHyperCardにおけるカードの順序は、最初のカードよりさらに一つさかのぼると最後のカードに行き、最後のカードからさらに一つ後に行くと最初のカードに行くといった具合に、尾を飲み込んだ蛇のような循環式になっている)。

バックグラウンドに文字を書き込む

 では、バックグラウンドに文字を書き込むにはどうするのか。2枚のうち、どちらのカードを表示させた状態でもいいから、「編集」メニューの「バックグラウンド」を選ぶ(未掲載:画面B03-08)。メニュー・バーに斜めの縞模様が入り、カードには下辺中央の左右の矢印だけがある、という表示になる。

 これが、同じスタックに存在するすべてのカードに共通するパターンを示しているのである(厳密にいうと、複数のバックグラウンドを持ったカードが一つのスタック中に共存し得るので、「同じバックグラウンドを共有するすべてのカードに共通なパターン」というべきだろう)。

 ここで前と同様に、「ツール」メニューの中のペイント・テキスト・ツール(「A」の字で示される)を選び、さきほど「KB会会員名簿」と書いたすぐ下の辺りに、再び「KB会会員名簿」と書き込んでみよう(未掲載:画面B03-09)。

 書き込んだ後、「編集」メニューの「バックグラウンド」をもう一度選んで、カード個々を表示するモード(メニュー・バーに斜めの縞模様が入っていない状態)に戻る。

 さきの、「ゴー」メニューの中の「前のカード」や「後のカード」を再び実行して、最初のカードと2番目のカードをながめてみる。バックグラウンド・モードに入る前に、最初にカードだけに書き込んだ字がそのまま見えるが、それと別にどちらのカードにも同じ文字が書かれているのがわかる。

 演習のために、2番目のカードに、何か最初のカードと異なる文字を書き込んでから、「編集」メニューの」新規カード」を再度実行してみよう。3番目のカードが作られるわけだが、バックグラウンドに書かれてある文字が、このカードにも自動的にコピーされることがおわかりいただけると思う。

要点:これだけは覚えておこう

 (1)HyperCardのカードにはバックグラウンドという概念がある。バックグラウンドはあらかじめ印刷された帳票枠のようなもので、同様の内容を書き込むカードならバックグラウンドを同じにすればよい。新しいカードを作るとバックグラウンドが自動的にコピーされるし、バックグラウンドを修正すると同じバックグラウンドを持つカードが何百枚あろうと、その部分が一斉に修正される。なお、Lesson 03で明確には述べていないが、スタックをまたがって同じバックグラウンドを持つことはできない。すなわち1つのバックグラウンドの有効範囲は1つのスタックの中に限られる。一方、1つのスタックに異なるバックグラウンドを持つカードが共存することは可能である。


Lesson 02
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