HyperCardでは、カードが集まってスタックとなる。HyperCardのカードの大きさは、HyperCard 1.Xの時代には決まっていて、Macintosh Plus、SE、SE/30のCRT画面とちょうど同じサイズ(対角線9インチ)だった。そのため、Macintosh IIなどでは、CRT画面(12インチや13インチ)よりカードが小さくなり、CRT画面の中央部にだけ9インチのカードが表示されていた。HyperCard 2.0以降、カードの大きさは自由になっている。
さて、会員名簿管理のためのスタックの作成に入ろう。Lesson 01で覚えたHyperCardの起動を実行して、Homeカードが表示されている状態に持っていってほしい。
新しいスタックを作るには、メニュー・バーのファイル・メニューで「新規スタック…」を選択する(未掲載:画面B02-01)。すると、ファイルを選択したり、新規ファイルを作成したりするときにおなじみのファイル指定のダイアログ・ボックスが出てくるので、スタック名を入力する(未掲載:画面B02-02)。この本では、「KB会会員名簿」とするが、読者の方の好きなように入力してほしい。
通常は「現在のバックグラウンドを流用」 のチェックボックス(□)がチェックされている(□の中が×印になっている)。今回はチェックされたままにしておこう。“バックグラウンド”という言葉の意味は、∠Lesson 3(xxxページ)で詳しく説明する。
スタック名を入力し終えたら、改行(Return)キーを押すか、Enterキーを押すか、「新規作成」ボタンをマウスでクリックするか、のいずれかを行う。すると、下の方に左向きと右向きの矢印があって、あとは枠以外真っ白のカードが登場する。これが新規作成したスタック「KB会会員名簿」の第1号カードである(未掲載:画面B02-02)。
第1号カードに書き込んだり、第2号カードを付け加えたりする操作は、Lesson 03で実行することにして、このLessonでは、HyperCardの終了の仕方を覚えよう。
HyperCardの終了は簡単だ。マウスを動かして画面上辺にあるメニュー・バーの「ファイル」の位置にカーソルを持っていき、マウスのボタンを押してから押したまま下にずらす(ドラッギング操作と呼ぶ)。一番下の「終了」のところまで来たらボタンの手を離す(未掲載:画面B03-01)。これだけでよい。
ワープロ・ソフトや表計算ソフトを使い慣れた読者の中には、あれっと思われる方がいるかもしれない。「保存(セーブ)操作はどうしたのか」と…。
実は、Macintoshに限らず、他のパソコンの多くででもそうなのだが、データベース・ソフトに限っては、テンポラリ・ワークおよび保存という概念がないのである。
テンポラリ・ワークとは、ディスクに保存せず、パソコンのメイン・メモリ(RAM)上だけで、ワープロの文章や表計算の表のデータを作成することをいう。
テンポラリ・ワークだと、何時間作業をしようと、それは仮の仕事に過ぎず、内容は保存されない。そのままパソコンの電源を切ったり、システム・エラーや停電が起きたりすると、作業の結果は消えてなくなってしまう。次回パソコンの電源を入れても、呼び戻すことはできない。「保存」操作を実行し、テンポラリ・ワークを磁気ディスクに記憶させて、はじめて真の仕事になる。保存した結果を次回以降、ディスクから呼び出して、そこからスタートすることができるのである。
ところがデータベース・ソフトでは、データ(カード型データベースならカードの枚数)が何千、何万となることがある。当然、パソコンのメイン・メモリだけではおさまり切れず、磁気ディスクに蓄積する(データベース・ソフトを使う場合にはフロッピー・ディスクだけではなくハード・ディスクを装備した方がよい)。
データの新規入力でも、データの修正でも、何か操作を実行すると同時に、ディスクの内容がその通りに変わるようになっている。つまり、保存操作をあらためて指示しなくても、仕事の結果は自動的に保存されているのである。
第1部で述べたように、HyperCardはハイパーメディア・ソフトであると同時に、カード型データベース・ソフトでもある。そこで保存操作を行わずに終了してよい。終了直前までの作業結果がきちんとディスクに蓄積されている。
逆にいうと、何百枚もあるカードの、特定の個所を誤って全部書き換えてしまったとか、何枚ものカードを誤って消してしまったとかいう場合でも、取り返しがつかない。そうした作業の結果が(たとえ操作の誤りによるものであっても)即座にディスクの内容に反映されるようになっているからである。ワープロなどなら間違えて変更してしまったデータは保存せずに終了すればよい。同じデータを再度呼び出せば最後に保存した姿に戻る。データベースでは、それができない。
そのため、HyperCardで、カードがある程度の枚数になったら、バックアップコピーをとって、スタック(カードの集まり)の現在の状況をコピーしてとっておく。重大なミスをやらかしてスタックが用をなさなくなった場合でもバックアップコピーに戻って再開できる。もちろんバックアップコピーをとった後に実施した作業の分は失われてしまうが…。
(1)HyperCardなどデータベース・ソフトには、一般に「保存(セーブ)操作」という概念がない。データに手を加えれば、特に指示がなくとも、ディスク上のデータがそれに応じて変更される。従って、ワープロなどのように、修正に失敗して取り返しのつかない姿になっても、保存しなければ元に(最後に保存操作をしたときの姿に)戻る、というものではない。バックアップ・コピーが大切である。
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