種種のさ、愚作 (くさぐさのさ ぐさく)
地口など
その五 (わ!にわ)
もとになった回文「鶏と小鳥と鰐」は、http://homepage1.nifty.com/zpe60314/kotoba2.htm に、掲載されていたもの
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前奏曲の前奏曲の前奏曲の前奏曲の前奏曲:
わ、庭 (わ にわ)
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望遠鏡を覗く。驚いた、大きな庭が見える。いろいろな生き物が住んでいそう。庭の池の上に黒いもの。雁が浮かんでいるのか。
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前奏曲の前奏曲の前奏曲の前奏曲:
雁か (かりか)
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この庭にいるのは、雁か。引き続き、望遠鏡で庭を探る。庭の木の陰にも何かいる。黄色い嘴。小鳥か。
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前奏曲の前奏曲の前奏曲:
雁と小鳥か (かりとことりか)
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庭にいるのは、雁と小鳥か。小鳥にしては、大きすぎるか。どちらにしても、雁と小鳥なら事件は起きまい。「ことなかれ」主義で「こと」の字をとる・・・。と思ったら、庭の外、庭に近づく人影。猟銃を持っている。雁捕りか。
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前奏曲の前奏曲:
雁捕りか (かりとりか)
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庭に近づいているのは雁捕りか。さらに、もう1つの人影が、別の方向から、庭に近づいている。網と籠とを持つ。小鳥捕りか。
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前奏曲:
雁捕りと小鳥捕りか (かりとりとことりとりか)
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庭に近づいているのは、雁捕りと小鳥捕りか。さらに近づいて仮りの姿がやがて明瞭に。猟銃を持つのは、鰐捕り。網と籠とを持つのは、鶏捕り。そうすると、池に浮かぶ黒いものは鰐の頭。庭木の陰の嘴は、鶏だ。「かり」の字がなくなり・・・。にわかに字が増えて・・・。
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最初:
鶏と鶏捕りと鰐捕りと鰐 (にわとりとにわとりとりとわにとりとわに)
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庭に鶏と鶏捕りと鰐捕りと鰐とがいる。ここで「取り合い」がある。鶏捕りと鰐捕りとが、自分の仕事のために相手が邪魔になるので取っ組み合いをしながら庭から出て行く。人間がいなくなったので何かが庭に飛んで来た。飛んで来て、すぐに庭木の陰になったのでよく見えない。高く飛べるので鶏ではない。雁か。
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次:
雁と鰐と鶏か (かりとわにとにわとりか)
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庭にいるのは、雁と鰐と鶏か。飛んで来て、庭木の陰にいたものが陰から出てきた。雁ではなく、小鳥であった。
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次:
鶏と小鳥と鰐 (にわとりとことりとわに)
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庭に鶏と小鳥と鰐とがいる。小鳥の声に魅かれて、子供が庭に出てきた。鰐がいるというのに、何と危ない。
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次:
小鳥と鰐と鶏と子 (ことりとわにとにわとりとこ)
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庭に小鳥と鰐と鶏と子とがいる。鰐捕りとの取っ組み合いに勝った鶏捕りが戻って来て、子を急いで庭から追い出す。鰐から逃がしたいのと、鶏捕りの現場を見せたくないという思いだ。鶏に向かって網を投げる。捕まえられたか。
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次:
空か (からか)
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鶏に向かって投げた網は、空であった。落胆する鶏捕り。さらに鶏を追うが、とり逃がし、鶏は庭から外に逃げる。腹が減った。どうするか。
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次:
腹は (はらは)
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腹はどうする。空腹の鶏捕りは、少しでも腹を満たすために、餌を蒔き、網と籠とで小鳥を捕って食う。
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次:
鶏捕りと鰐 (にわとりとりとわに)
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庭に、鶏捕りと鰐とがいる。ここで、捕り物がある。銃を持っていないうえに、小鳥を食って小腹を満たし、動作が緩慢になった鶏捕り。小鳥か鶏か、あわよくば人間の子供のどれかは食えると思っていたのに、どれもいなくなり、腹をすかせて怒った敏捷な鰐。鶏捕りが鰐につかまって食われてしまったのである。満腹になって眠る鰐。当面の敵が消えて安心した鶏が戻ってくる。「とり」の字がなくなる。
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次:
鶏と鰐 (にわとりとわに)
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庭に、鶏と鰐とがいる。ここで、捕り物がある。小鳥を捕るときに蒔いた餌をついばんで腹が膨らみ、動作が緩慢になった鶏が、鰐につかまってしまったのである。「とり」の字がなくなる。
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次:
鰐と庭 (わにとにわ)
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庭に鰐がいる。鰐捕りが戻ってくる。鰐しかいない「鰐の庭」(わにのにわ)。さっき、喧嘩したとはいえ、言ってみれば同業者である。鶏捕りは、どこに行ったのか。
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次:
同胞は (はらからは)
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鶏捕りは、どこか。鰐が満腹で眠っている。網や籠が残っており、餌を蒔いたあともある。鰐に食われたとしか考えられない。鰐捕りは、人が雲隠れして、鰐の仕業と疑われるときにも、呼ばれるのだ。そんなときのために、ルミノール液を持参している。
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次:
血のあるの見る、庭にルミノール。あの血 (ちのあるのみるにわにるみのるあのち)
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やはり鰐のせいであった。仲間の敵打ちである。満腹で眠っている鰐を捕まえて息を絶えさせる。皮を剥ぎ、肉を切り分ける。
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次:
鰐捕りと庭 (わにとりとにわ)
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庭に鰐捕りがいる。鶏捕りの供養もせねばなるまい。数時間前、皮に傷つけないために、鰐にまたがり、首を絞めた「鰐乗りの庭」(わにのりのにわ)を出る。
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次:
永遠に庭と (とわににわと)
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誰もいない庭を外から眺める鰐捕り。思い出深い庭に、また来るときまでその姿で、と別れを告げる。「わにとりとにわ」の「にわ」を出て、「わに」を売り・・・。
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次:
トリート (とりーと)
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【treat:名詞のとき、もてなし、おごり、ごちそう、特別な楽しみ。】 街のどこか。自分で自分に、御馳走を振舞う鰐捕り。一方で、鶏捕りの最期を思うと、複雑な心境。鰐を売って儲けた金を、わずかに残して使い果たす鰐捕り。「利食い」をしてしまったわけだ。「り」の字がなくなる。
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次:
トト (とと)
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【TOTO:サッカーくじ】 わずかに残した金を、手近なギャンブルに注ぎ込む。すっからかん。
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次:
小鳥捕りと子 (ことりとりとこ)
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文無しになり、腹をすかせた鰐捕り。あの庭を思い出す。人々の生活を支える不可欠の仕事だが、動物捕りには、どこか、悲しい性質、性(さが)が付き纏う。鶏捕りが、小鳥を捕って食ったことに思い至る。子供がそれを見て、傷ついたりしていないだろうか。
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次:
鶏とニワトコ捕りと子と鰐捕りと鰐 (にわとりとにわとことりとことわにとりとわに)
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どうしたら悲劇を防げたのか。鶏捕りと鰐捕りという、角突き合わせる動物捕りが鉢合わせしなければよかったのだろうか。鰐捕りが庭に居続ければ、人が鰐に食われることはなかったろう。鶏捕りが、仮に、ニワトコ捕りだったら喧嘩をせずに済んだのか・・・。子供が庭に居続けても守れただろうか・・・。
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次:
ニワトコ捕りと子と鰐 (にわとことりとことわに)
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仮にニワトコ捕りだったとしても悲劇を防げなかったかもしれない。鰐を捕ってもすぐには食えない。腹が減った自分は、ニワトコの実を分けてもらう程度で済んだだろうか。血に飢えた自分は、結局、鶏を追いかけて庭を離れたかもしれない。そうすると、ニワトコ捕りと子と鰐とが庭に残ることになる。これは、悲劇を呼ぶ・・・。
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次:
性さ (さがさ)
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動物捕りの自分が居るかぎり、その性質、性(さが)が招く悲劇は、防げなかったのか。しかし、人々の生活を支える大事な仕事だ。仕事に自負を持ち続けてきた。開き直るか。
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最後の状態:
小鳥と子 (ことりとこ)
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空腹も感じないほど弱り、道端でまどろむ鰐捕り。庭の夢を見る。同業者に起きた血なまぐさい出来事など忘れ、美化された思い出。小鳥と子が遊ぶ、あの庭。 (08年6月上旬掲載)
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背景の画像は素材屋カララバから提供いただきました。
(c) NAKANO_Consortium_Yokohama-shi_Kanagawa-ken_JAPAN_2005-2008