知的財産権ビジネス戦略 第5章第1節

5-1. 各種事業の可能性が広がる


民生分野の事業の可能性 拡大するソフトウェア産業

民生分野の事業の可能性

 マルチメディアの普及は、既存の情報提供産業の変身、融合、盛衰をもたらす。通信、データベース、放送、新聞、出版、印刷、映画、興行、図書館などである。これらの活動のためのハードウェアやソフトウェア(ツールとなるプログラム)やメディアの提供産業、すなわち、コンピュータ、周辺機器、半導体、家庭電機、ソフトハウス、記憶媒体などのメーカーにも影響を及ぼす。こうした企業間の合併、買収、提携がひんぱんに起きる。実際、95年に、米国の3大ネットワークのうちの2つが、1日違いであいついで合併されたのは記憶に新しい。大企業がスケールメリットを求めてますます巨大になる一方で、新しいベンチャ企業の出現、発展も加速する。

 冒頭のような記述だと、マルチメディア周辺産業のダイナミクスは感覚的に理解できても、その動向を構造的に捉えることができない。まず民生分野を対象に、3つの視点を示し、市場分野を4つに分ける。

 3つの視点とは、ネットワーク、ハードウェア、ソフトウェアである。4つの市場とは、この3つの市場に、旧来からのマスメディアを4つ目の項目として別建てにして加えたものである。家庭用ゲーム機のメーカーなど、ハードウェアとソフトウェアの両方の性格を備える企業が存在するが、わざわざ5つ目の項目を建てることはせず、ハード、ソフトのどちらかの中で論じる。

 まず、ネットワーク産業については、民生向けと産業向けとをことさらに区別する理由がないので、産業向けの項で触れる。ハードウェアでは、パソコン、地上波普通テレビやハイビジョンや衛星放送テレビや通信衛星テレビやCATVの各受信機器、ゲーム専用機、携帯情報端末、ファクシミリなどに、動きが生じる。ネットワークコンピュータ(NC)やネットワークPCの台頭もある。

拡大するソフトウェア産業

 こうした各種プラットフォームの普及に伴い、ソフトが多様化し、応用が広がる。ソフトにはツールとコンテンツ(タイトル。ソフトというとツールなのかそのまま鑑賞の対象となる作品なのかわかりにくいので、後者であることを明確にするとき、タイトルと呼ぶ)とがある。民生分野では、ツールを使う人口よりコンテンツを見る人口の方が通常多い(ゲームと作る人とする人の差を思い浮かべればよい)。このため、コンテンツ作成側は堅調な商売になると考えられる。

 ソフトで遅れているといわれる日本だが、ゲームとアニメーションの分野では、日本の評価は高い。民生分野でのマルチメディアといえば、これらが大きな比率を占めるのは間違いない。ゲームとアニメにおいては、言語の占める比重がそれほどは高くないから、世界市場の大きさという面でも魅力がある。

 マスメディア産業は、こうした動きのあおりを受けて変容せざるをえない。放送局の株をめぐる動き(テレビ朝日とソフトバンク)、新聞社とパソコン通信会社との提携(日本経済新聞とアメリカンオンライン、毎日新聞とジャストシステム)、出版社と電機会社との提携(平凡社と日立)などは、そのほんの一例である。

図5-1-1 民生分野のマルチメディア関連産業のキーワード
ネットワーク5-2参照
ハードウェアSOHO向けOA機器パソコン、ファクシミリ
娯楽家電地上波テレビ、ハイビジョン、BS、CS、CATVの各受信機、ゲーム専用機
情報家電PDA、ネットワークコンピュータ、ネットワークPC
ソフトウェアツール産業分野とほぼ同じ
コンテンツゲーム、アニメーション
旧来からのマスメディア8章など参照

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