フリーの編集者向けにマルチメディア時代の著作権の学習会を開催


寄稿 アスキー 報道局 記者 若名麻里 氏

WWW主宰者(中野)から:若名麻里 氏に寄稿いただいた。若名氏は、問題意識に富み、主宰者の世代の言葉で言えば「ガッツのある」若手ライターである。今後の活躍が期待される。98年4月10日ごろには書きあがっていたものだが、主宰者の怠慢により掲載が遅れた。関係者にはお詫び申し上げたい。


ユニオン出版ネットワーク・出版ネッツは、フリーの編集者やデザイナー向けに、マルチメディア時代の著作権に関する学習会を98年4月9日に開催した。「ホームページを誌面に掲載するときに、ネットスケープの枠は著作物として扱わなければならないのか」など現場から活発な意見交換がされた。
http://www.jca.ax.apc.org/NETS/


 ユニオン出版ネットワーク・出版ネッツは、“デジタル化時代に備えあれば憂いなし!フリーランサーのための著作権講座”というテーマで学習会を4月9日に開催した。同団体は出版労連に加盟する全国組織で、フリーのライター、編集者、デザイナーなど約200人が加盟しているという。

 学習会の前半は、著作権とは何か、どんなものが著作物にあたるのかという話から、インターネットやマルチメディアにおける著作権などについて、立教大学社会学部非常勤講師の中野潔氏が講義した。

 後半は、質疑応答。 「この機会にぜひ聞いておきたいことがある」という参加者が多く、実体験に基づいた質問が出された。

 「雑誌向けに連載を執筆した。先日出版社から『雑誌の一年間分の内容をCD-ROMに収録したいので、転用していいか』という連絡があったが、2次使用料の請求はできるのか」という質問には、「CD-ROMやホームページなどに複製して利用するという条件を最初の契約時に出す出版社は多い。最初の段階でギャラを多めにもらっておいた方がいい」(中野氏)。参加者からは、「2次使用料を下手に請求したら自分の連載だけCD-ROMからはずされてしまうかもしれない」「フリーだと出版社との力関係の問題があり難しい」などの意見があった。

 「誌面にホームページの画面を使うとき、ホームページの持ち主には掲載の許可をとった。ネットスケープの枠は、ネットスケープ・コミュニケーションズからクレームがくると困るので載せないことにした」というコメントには、 「ネットスケープの枠は美術の著作物とは言えないので引用(掲載)したもの勝ち。でも万が一ネットスケープ側がなにか言ってきたら、相手(ネットスケープ)は弁護士をいっぱい抱えているのでたいへんかもしれない」(中野氏)。

 「デザインをしてMOで納品をすると、その中に入っている素材などが別の目的でいつの間にか利用されている」という意見には、「理論的には、当初の目的以外には使ってはいけないことになっている。また写植でフィルム納品の場合には、中間生成物は発注者に渡さなくていいという判例があるのだが……」(中野氏)。デジタル関連の著作権には不明瞭な部分も多く、特にフリーでは立場が弱くなってしまうことが多いようだ。

 主催者によると、4年ほど前からデジタル関連で「こんなときどうしたらいいんだろう?」という問題が出てきており、フリーでは情報的にも孤立してしまうため、学習会を開催したという。(アスキー 報道局 若名麻里)
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