郵政省もビッグブラザーズの御意向のままに

執筆:97年11月上旬


 ウィンテル連合が、自分たちの後押しするデジタル放送の規格が、電気通信技術審議会の考慮対象からはずれたため、郵政省をターゲットにして巻き返しに出ている(日経産業新聞97年10月17日付)。

 電気通信技術審議会(郵政省の諮問機関)の作業部会は、デジタルテレビ放送の規格について審議を進めている。いままでは、規格の乱立を防ぐため、3方式程度を生かし、後は落とす心づもりであった。ウィンテルを旗手とするパソコン業界の推す720P(720は走査線の数。Pはプログレッシブの略で要はノンインターレースのこと)は、現在の技術水準では放送として実現するのが難しいとして、これをはずす意向だった。家電、放送業界の推す1080I(走査線1080本のインタレース)、480I、480Pの3方式のみを認める方向である。

 自由競争で生き残ったものが事実上の標準になればいいという主義のウィンテルがこれに噛みついた。通信民営化論争、ハイビジョン論争などで、ぽかぽか太陽の放送通信盆地から引き出され、疾風びゅうびゅうの情報産業平野に置かれた郵政省も敏感に反応。電気通信技術審議会が、各社の意向を聞くという方針に変わった。

 筆者(中野)の知人が勤める日本資本のある企業では、そこはかとない意向を察して(筆者の手では郵政省の命令とは書けない)プログレッシブの採用を求める意見書を出すことになった。米国資本の企業が言ってもだめで、純国産資本の企業が主張するところに意味があるらしい。

 97年10月29日に筆者は、社会生産性本部の朝食会のコーディネータを勤めた。スピーカは、日本のマイクロソフトの古川会長。古川氏は、米国のマイクロソフトが買収し、日本でも12月にサービスを開始するWebTVのデモにかなりの時間を割いた。御満悦の様子だった。実際見ていて、画面の洗練度などがいままでの日本のインターネットTVより数段上だ、という印象を受けた。WebTVは、あくまでもインターネットの回線を通じてテレビとWWWとの中間のようなコンテンツを受けるという話だから、いままで述べてきたデジタル放送の規格と直接の関係はない。

 しかし、次に覇権確立を目指すジャンルの1つとして、マイクロソフトが広義のテレビを選んだのは明白である。郵便や郵貯の民営化に絶対反対の郵政省も、こうした分野ではなぜか、規制撤廃、自由競争擁護派のお面をときどき被ったりするのである。


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