情報公開に彼我の大きな差

執筆:97年9月下旬


 韓国で、ネットワークを通じた情報公開が進展している。韓国の情報公開法では「コンピュータにより処理される媒体に記録された事項」も公開対象になっている。電子メールによる公開請求も受けつける方向だ。

 総務庁に当たる役所と郵政省に当たる役所が合同で、「電子政府」の構想も進めている。インターネット上に数十の中央行政機関が既に設けているワールドワイドウェブのページを、政府統一ページにリンクする。蓄積された各情報を横断してキーワード検索できるようにする。

 司法の行政事務も急速にOA化されて、公開されている。最高裁に当たる裁判所の図書館がデータを蓄積し、誰でも見られるようにしている。1948年以来の主な判例4万7000件、論文8万6000ページ分、その他に法令、図書館の目録が検索、表示できる。

インターネットは、情報を公開して、国の運営を効率的に、公正に、公平に進めようとする者の味方だ。

 インターネットは、公開したくない側の思惑も脅かす。英国ノッティンガムシャー政府は、1980年代末のある事件の再調査報告書を公開禁止文書にしていた。そのある事件が実は当局の思い込みだったことが再調査でわかったからである。これを英国のジャーナリスト三人がインターネット上で公開した。州当局は削除を命じ、ジャーナリスト三人は従ったが、その時には世界のミラーサーバー(同じ内容を載せる出張所のようなもの)に載っていた。州当局は、各サーバー管理者に削除を要求していたが要求継続を断念した。

いつかあらためて扱うつもりだが、この無限の合せ鏡のようなインターネットの性質は、政府の犯した罪をしぶとく忘れないのにも使えるが、冤罪で起訴された無実の人の名を、半永久的に晒し続けるのにも使えてしまう。コピーのコピーを続ければ、名誉毀損、人権侵害の情報が、もぐらたたきのように、世界のどこかで忘れたころに再び鎌首をもたげる。

インターネットの剣は、権力の腐敗を防ぐことに使うべきである。


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