執筆:97年9月下旬
パソコン用ビジネスソフトの権利を保護する米国の非営利団体、ビジネス・ソフトウェア・アライアンス(BSA)は、企業における市販ソフトの違法コピーに関する訴訟で、内部告発の法廷証言台に立った人に30万円の謝礼を支払うことにした。
BSAは世界で活動している。シンガポールでは、上場企業のSMサミット・ホールディング社をシンガポール捜査当局と組んで捜索した。CD-ROM制作機、関係書類などを押収し、同社と関係会社を、マイクロソフト、オートデスク、アドビ・システムズの代理人として提訴した。
日本では、95年から電話で違法コピーホットラインを設けた。97年夏からは、新聞、雑誌や中吊り広告で情報提供を訴え掛け、電子メールでの受付体制も整備した。情報に基づき、加盟ソフトハウスと組んで調査や違法コピー廃棄要求を出す。違反状態が解消されると3万円、民事訴訟の法廷で証言すると30万円の謝礼が出る。
一方、日本のソフトハウスは、コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)を作っている。96年には大阪のソフト受託開発会社で大掛かりな違法コピーが明らかになり、1億4000万円を会社が払う和解劇となった。これも社員の内部告発が発端となっている。
阪大の出身者が設立したことで知られる、先進的な技術を備えたパソコンソフトパッケージのソフトハウス、D社の社長が嘆いたことがある。「親父の勤めていた会社やから、悪う言いとうないんやけど、民営化された元公社のハイテク企業。ソフトを1本納入すると、次の週には全国の支店にコピーが完備されているんやからね。ソフト開発の元がとれるわけないやんか」。
BSAの推定によると、日本におけるビジネスソフトの違法コピー率は41%で、米国の27%に比べ高い。
企業内の違法コピーの証拠を得るのは、非常に難しいから、内部告発は非常に有力な摘発支援となる。というか、内部告発がないかぎり、摘発は難しい。
日本人の妬み癖からすると、告発して謝礼を受け取った人間に対する、嫌がらせがひどくなることだろう。しかしここで負けてはいけない。違法コピーは、刑事罰の対象になる犯罪である。する方が悪いのである。会社の利益のためというのは、赦免の理由にならない。ことは刑事罰だから、会社の利益のために窃盗や殺人、というのと同じになってしまう。